168-3 金澤ビル(改修工事)

用途: 竣工年月: 場所: 設計: 構造: 規模:

「和の趣」を活かした、八丁堀のビルリフォーム

八丁堀で、長い間建築関係の会社を営んでこられた建て主は、事業清算を機会に、事務所併用住宅のリフォームを計画された。1階を将来テナントとして貸すことを想定し、また2-3階の居住部分、屋上の躯体のメンテナンスが主な目的である。上部の生活感があまり感じられないようにしてほしい、というご希望であった。
このエリアは、大通りから入った路地に、古い小さな住宅や事務所が連なり、飲食店やオフィスなどの需要が今後も見込める場所である。建て主は、町内会長や老人会などの役員を歴任し、地域の活性化への思いも人一倍という方である。
まず、リフォームの前提条件に、建物前面のビルの非常階段からの視線を排除するということがあった。タバコを吸いに裏の階段に出てくる人がたくさんいて、建て主のリビングのプライバシーが確保できない。目隠しのルーバーをつける―あるいは緑化で、と打ち合わせているときに、建て主は「八丁堀でやるからには、その痕跡みたいなものができないか」という提案をされた。その投げかけに、一種の反省、つまり我々は都心のビルディングを設計する際、これまで日本の伝統的なデザインをあえて反映させてこなかったのではないかと気が付いた。「八丁堀的な雰囲気」という言葉に、直感的に木の縦格子でということになった。採用したルーバーの木は、液体ガラスを杉に圧力注入することで腐らないようにした西川木材のものである。塗り替えも可能。間には中空ポリカーボネートシートを挟んで、採光とデザインに配慮している。
居住スペースの2階へ続く右側の外部階段は老朽化が激しく、鉄骨フレームを入れて補強。妻壁には、天井と壁に新たに鉄筋のブレースを入れて支えている。3階のテラスはうまく活用されておらず、防水も切れて雨漏りもひどかったので、この機会に開放感のある空間に変えた。そして、外壁もガルバリウム工法で新たに壁を作ってくるみ直し、耐久性を確保した。
2階のリビングダイニングの正面の壁には、鏡にサンドグラスのフィルムを貼り、すりガラスを通してみたような奥行感と、唐紙のような和の趣を持った仕上げを施した。
照明は、専門の建て主が選ばれて、ほとんどこちらはタッチしていないが、3階は解体してみると梁が入っているのがわかり、天井高をさらに20cmくらい上げられるのではないかと傾斜のある天井に作り直した。そのため、照明もガラスへの映り込みのバランスを考えて、部屋の対角線上に配置し、こちらで構成を考えた。
工事は、隣地との間が狭く大変だったが、建て主が近隣との良好な関係を築いていてくださったおかげでスムーズに調整がついた。

(関根裕司氏 談)

所在地:中央区
構造:S造
規模:地上3階
用途:事務所・住宅
設計・監理:関根裕司/ARBOS
施工担当:柴田
竣工:2014年1月
撮影:アック東京

2014年3月11日 at 6:00 PM