171-5 桜新町マンションリノベーション計画(改修工事)
時間の経過を感じさせながら、モダンな空間に生まれ変わった設計者の自邸
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①キッチンはウォールタイプのミニマルなものを採用、排気ダクトを現しとし、床の古材フローリングのラフな雰囲気とマッチしている
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②トイレ、洗面は間接照明を採用し、落ち着いたモダン空間に変った
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③水周りを壁で隠し、以前の部屋の仕切りを外したLDKは、一つながりの部屋となった
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④寝室。天井の照明は、レールの可動式のものを採用、フレキシブルにレイアウト変更に対応できる
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before写真は購入後、改修前のスケルトン状態にしたもの3点 ①コンクリートの状態はいずれも問題なく、サッシの木枠も既存を転用
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②天井は既存スラブの上に木毛セメント板貼りにして、以前より高くなった
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③梁型はコンクリート現しとし、クリーニング程度にとどめる。床は二重床に施工した
1月のある日、建築設計会社にお勤めのM様より、ご自身の設計によるマンションのフルリノベーションの見積依頼をいただきました。
経年変化を経た味わいを肯定的にとらえているというM様は、あえて中古マンションを購入されて、スケルトンに最低限の設備と間仕切りを備えた住宅にリノベーションをしたいというご希望でした。
古材フローリングの採用や、自分で塗装作業なども行うという、目的も方法もはっきりとした計画で、キッチンなどの設備の品番指定や納まりの図面に至るまで、完璧な情報をご提供いただきました。(編集部)
都心で環境のいいエリアを希望していたので、中古マンションをリノベーションするのが、最もリーズナブルで希望に合う空間を手に入れる方法でした。変な表現ですが、できるだけぼろぼろの物件を探しました。
コンセプトは、設計者の痕跡を残さないデザインです。できるだけ過度な表現やプランニングは避けました。ざっくりとしながらも、細部に美意識が集約されているようなものを目指しました。
ワンルーム形式で空間を構成しながらも、既存の荒々しい躯体と厳選された素材や金物等を対峙させることで、時間の経過を前向きにとらえました。古材に近い床材を選んだのも、時間の経過した柔らかい空間、以前からそこにあったかのような雰囲気を維持したかったからです。
一方で、ステンレスのシンクなど、モダンな素材を荒々しい素材とあえて対峙させることで現代的な雰囲気も部分的に忍び込ませています。
時間の経過は新築にない、得難い価値と考えています。その価値を損ねず、沿わせていくデザインが実現できました。
(M様)