195-3 上原の家
視線、採光、換気に配慮し、コンクリートらしさを活かす
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①全景
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②1階奥のフリースペース
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③2階バスルーム。仕切りを設けないオープンなつくりになっている。
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④3階中央の吹き抜け部分。その向こうの一段低くなっているダイニングを臨む。階段はスチールプレート、コンクリート、グレーチングと部材を変化させている
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⑤3階キッチンは、アメリカンブラックチェリーを使った製作家具。黒い石の天板や床のタイルも落ち着いた色調でまとめられている
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⑥ガラスで仕切られた1階からの階段を上がったところが、居住スペースの入口。間接照明でシリカライムのベージュ色の壁が温かみを演出
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⑦4階アトリエスペースから、屋上方向を臨む。大きな一枚扉から、ふんだんに光が差し込む
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⑧屋上にはコンクリートのベンチが壁づたいに作られており、シャワーも取り付けたプライベートスペースとなっている
クリエーターの夫妻の自宅である。杉板型枠のコンクリート打ち放しの壁面、そして、光と風を取り入れた過ごしやすい空間を建て主は希望された。温熱環境は、湿式外断熱システムのドイツの「アルセコ外断熱システム」を採用、湿気の多い日本の気候にマッチしている。壁の仕上げはコンクリート打ち放しを基本としているが、2階はさばく色の「天然無機左官材シリカライム」を左官仕上げで施し、温かみを加えている。南北に細長い敷地は、既に両サイドに住宅が建っていたが、奥には隣接する住居の庭があり、その南西側、そして前面道路の北側から、採光・通風を確保することができた。
まず北側の前面道路に面して駐車スペースを設け、キャンティレバーの1階に玄関、そして賃貸に利用できるスペースを奥に配置している。2階への階段を上ると、南側に大きなバスルーム、反対側が寝室となっている。3階はリビング、そして北側にステップを低くしたダイニングが見通しのよいひとつながりの空間を作っている。フロア中央の吹き抜けには角度を変えたスチール階段と片持ち階段を配置し、コンクリート打ち放しの壁面を活かしたデザインを生み出した。吹き抜けの上部となる4階はアトリエとして利用され、さらにそこから屋上へと続く。コンクリートの壁で囲まれた日当たりのよい空間は、大きな一枚扉で出られる「もう一つの部屋」といった感覚だ。
長方形の奥が少し三角形に飛び出た不定形な敷地いっぱいに作りこんだため生まれた三角形のスペースも、窓やトップライトなどで行き止まり感がないようにと工夫した。以前、辰で施工した「M邸(ShinClub139)」で行った、抜け感を大事にした空間づくりを、今回も効果的に行うことができたと考えている。
(枝松玲子氏/twigdesign 談)
所在地:渋谷区
構造:RC造
規模:地上4階
用途:専用住宅
設計・監理:枝松玲子/twigdesign
施工担当:谷
竣工:2015年11月
撮影:アック東京