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196-1 地域と選挙

「駒沢の家 Ⅱ」 撮影:アック東京

 

写真は、以前、弊社で施工した住宅の敷地に新たに建てられた多世帯住宅です。長年ご家族に愛されてきた庭を活かしたプランを設計した「現代計画研究所」は専用住宅だけでなく、公共の集合住宅や学校などの計画でも実績のある事務所です。「地域」の特性を活かした、そのまちづくりのコンサルティングで、自治体への協力も多いとのことです。今月のフロントラインでは、その「地域」についての話を、代表の今井氏に聞かせていただきました。

「地域」と言えば、6月末、世界中が注目する中、英国のEU離脱のニュースが流れました。国民投票による決定は、大方の下馬評を覆して、離脱派が僅差で残留派を下しました。日本では一時金融市場が混乱しましたが、当の英国でもまだまだ混乱が続くようです。
EUの一員とはいえ、島国で他のEU諸国とは事情が少し異なる上、かつての「大英帝国」の夢を忘れられない高齢者層や低所得者層の不満が爆発したのでしょうが、結果が吉と出るか凶と出るか、いずれにしても自力で頑張る選択をしたのです。その行く末を注意深く見守りたいですね。

英国のEU離脱後、『帰ってきたヒトラー』というドイツ映画を見ました。1945年の第二次大戦終了間際から現代のベルリンへタイムスリップしてきたヒトラーが、もの真似芸人と勘違いされてテレビ番組に出る羽目になっていく物語です。ドキュメンタリータッチの映像、そして主役の俳優のヒトラーそっくりの演技に引き付けられ、初めのうちはコミカルに描かれるドイツの「今」を笑って見ていました。
が、後半になるにつれ、物語のテーマが明らかになっていきます。ヒトラーは「選挙」により民衆に選ばれた代表でした。決して暴力により、その地位についたわけではありませんでした。未来を語り、国の経済を語り、問題を解決しようと語る力がありました。その力は現代においても、力強い魅力です。人々は、混乱し、問題が複雑になっているときに、強いリーダーを求めます。その時、きちんとした情報を得ているのか、打ち出す政策へのプロセスは正しいのか。最後は笑えない結末です。この映画がヒットしているドイツでは、第二次大戦後、国民投票を行わないことになっています。

さて、日本ではというと、7月10日に「第24回参議院議員選挙」が行われます。今年から選挙権年齢が18歳以上に改められ、若い世代の意見も取り入れられるようになりました。今や65歳以上の高齢者人口は3186万人(平成25年9月15日現在推計)で総人口に占める割合は25.0%となり、人口、割合共に過去最高となりました。政策に対して「高齢者に厚く若い世代には薄い」という声が上がっていることもあり、政府も配慮を見せたというところです。

しかし、世界ではすでに90%以上が、選挙年齢が18歳からになっているのです。そのせいもあるのでしょうか、ひ弱な環境で育った日本の18歳、高校生は「childish (幼い)」というのが多くの外国人の印象ではないでしょうか。ただ、バブル世代から見ると、今の若い人たちは、「自分たちの頃よりしっかりしてる」という意見もあります。経済的に苦労している分、地道に自分の生き方を模索しているともいえるかもしれません。要は、自分の意見をきちんという習慣があるか、ないかの差なのでしょう。

若い世代の方たちにはぜひ選挙に行っていただき、その権利を大事に使ってほしいですね。子供だとか、若く見える、ということは決してほめ言葉ではないのですから。

196-2 駒沢の家Ⅱ

記憶を内在した未来志向住宅

 

  「SHIN CLUB 130 (2011年1月号)」で紹介された、『駒沢の家』の隣地に建つ2世帯の専用住宅である。
『駒沢の家』と合わせた2棟に住む3世帯の家族は、かつてこの地に建っていた情緒ある木造住宅と、それに呼応する四季の変化に富む園庭に長い間慣れ親しみ、生活してきた経緯がある。その空間や時間の軸を崩さずに、建物と外部空間の連なりを創出することが、今回の計画の最大のテーマであった。
南東の芝生園庭を、2棟がL字型に囲み、集約化した配置としている。3世帯のリビングダイニングが共有の庭を臨み、ともに時の変化を楽しむ。
無梁板壁構造により、凹凸のない架構体とし、将来のリフォーム等も容易にできる永住空間としている。
2棟とも、素材感のあるチャコールグレー、およびオフホワイトのボーダータイルを基調に、アルミ材とガラスを鋭利なアクセントとした外観デザインとして、凛とした連なりのある景観としている。
(川上統/現代計画研究所)
所在地:世田谷区
構造:RC造
規模:地上3階
用途:専用住宅
設計・監理: 現代計画研究所
施工担当:瀧澤
竣工:2015年5月
撮影: ①②アック東京、③④田中昌

196-3 今井信博/現代計画研究所

長く愛着の持てる、住宅・建築・まちづくりに取り組む

今月は、「駒沢の家Ⅱ」を設計された、現代計画研究所を訪れました。SHINCLUB 130号で登壇いただいた、藤本昌也氏(元建築士会会長)と増山敏夫氏、下山政明氏ら3方が設立された事務所です。環境を読み込んだまちづくり、ニュータウンや団地などの建築計画や再生計画の実績で知られ、木造民家型構法の開発も行うなど、仕事は全国各地にわたっています。
現在、社長を務める今井信博氏にお話を伺いました。

―公共集合住宅の設計を数多く手掛けられていらっしゃいますね。今年で設立何年目になりますか。
今井: 44年目になります。設立当時は、オイルショックが起こり、戦後、高度成長路線でひたすら住宅供給が行われてきたことに対して、日本全体で見直しする機運が盛り上がっていました。置き去りになっていた地域性を踏まえた個性的な環境づくりを重視し、スタート間もない78年に「茨城県六番池団地及び会神原団地の企画・設計」(『日本建築学会賞・業績部門』受賞)で、風土を活かした空間づくりが評価され、以後20年くらい前まではコンサルも含めた公的な集合住宅や住宅地計画の仕事が中心で、以後民間の仕事、公共のプロポーザル・コンペでの仕事に変わってきました。

―当時の集合住宅を見ていたら、民間に比べてちょっと贅沢かなと思うくらい、敷地や居住空間にゆとりのある物件もみられます。
今井:おっしゃる通り、昭和50年代に建設された公共の集合住宅は、敷地に対し比較的ゆったりとしていて生活しやすく、今もいい物件として残っています。しかしバブルに向かって、次第に都心部の地価や工事費が高騰し、良質で安価な公共住宅が「民業圧迫」するという声もあったりして、国の住宅施策の目標も改められました。また、これまで高度成長期に建てられた物件が老朽化を迎えてきており、計画にあたっては、建てなおしたり修繕したりする前に、その地域の環境の変化、例えば人口減少のため、その場所で住宅建設の必要性がなくなった場合の跡地利用も含めて、厳しく調査・検討することが求められています。

私自身は、入所以来、東京に10年、広島事務所に10年、また東京に戻り、今年で10年目になりますが、高齢化や過疎化が先行する広島で学んだことは大きかったと思います。2000年、広島で手掛けた団地の設計(レイクヒル福富町営住宅)では、地場産業である木材産業の活性化も求められました。実は広島は林業以上に、輸入材中心の「製材業」・「木材加工業」がとても盛んな地域なのです。県の依頼で、地域の林産資源を活かす住宅生産の仕組みづくりの検討を行い、その後、設計者・工務店・材木店の仲間と地域材を用いた家づくりに取り組み、その良さを伝える活動も20年近くになります。
2007年には、滋賀県高島市の朽木東小学校、中学校共用体育館の改築工事にあたり、住民参加による新しい体育館づくりに参加しました。全国から12のチームが応募するプロポーザル・コンペが行われて、当事務所と水原建築設計事務所・山辺構造設計事務所が提案する、地元の杉材を用いた「持ち送り重ねアーチ梁」による屋根の案が採用されました。地域には、中学校が昭和25年から植林、下刈などの管理を行っている「学校林」と、「市有林」があり、地域材を使うことで誰からも愛される体育館を目指しました。アーチを支える柱と雪に埋もれる外壁はコンクリートで、長い冬期の積雪にも耐えられるものとし、小学校からのブリッジアプローチや、「サブアリーナ(小体育館)」も設け、小中学校兼用による時間割の重複、体格差の問題なども解消しました。夜間の社会体育にも利用されています。

昨年完成した、兵庫県の日本海側の但馬地域の豪雪地帯に建つ村岡小学校の耐震改修と改築では、地元の木材とその加工技術を用いて、校舎を「ふるさと教育の場」として計画しました。全校児童が集まるランチルームを中心にした木造棟は、スギ材の片流れの架構とし、特別教室や幼稚園等も入っています。RC造の既存校舎も木質化して活かした「木の学校」づくりは、世代を超えて受け継ぐ、食育、木育の場となり、木を使ったサイン製作などで児童も建設に参加しました。

こういった実績もあってか、最近では木造建築づくりの技術的支援や、まちづくりなど「建築で新たな環境を作る」、「今あるものを活かしながら、将来へ向けてその場所に必要な建築の仕組みづくりを行う」といったコンサルティング業務も増えています。また、木造建築の担い手の人材育成の観点や建設業界の若手人材の育成にかかわる仕組みやテキストの作成など、国交省や業界団体からの要請にも応えています。
時間はかかりますが、「地域や場所ごとの特性とプロセスを大事にする」当事務所のスタンスは、これからも変らない必要な姿勢だと思います。
―本日はどうもありがとうございました。

 

「今あるものを活かした建築が新たな環境をつくります」

 

 

現代計画研究所

1972年 藤本昌也、増山敏夫、下山政明ら大高正人建築設計事務所のOB、3人が設立。今年で44年を迎える。
2016年現在 所員:16名
東京本店、広島支店

取締役会長 藤本昌也
代表取締役社長 今井信博

http://gkk-tokyo.com/

 

 

196-4 「銀座7丁目ホテルプロジェクト工事」現場見学会 

現場見学会  6月4日  ~解説:清水建設東京支店建築第3部 楳田真一氏~

弊社グル―プ会社「ユニホー」が発注している、「銀座7丁目ホテル」がいよいよ仕上げ工事に入ってきました。施工の清水建設東京支店様のご好意により社内見学会が開かれました。
以前、仮設計画の勉強会で講師としてお世話になった建築第3部楳田真一所長に、今回も工事のポイントを説明いただきました。現場事務所での講義の一部をご紹介します。

楳田:建物は、1階に駐車場とコンビニが入ります。2階はホテルカウンターとレストランが入り、3-13階が客室で、プランは各階とも同じです。ご存知の通り、銀座は非常に地価が高く、敷地ぎりぎりに建物が計画されています。また一方通行が多いので、資材搬入には神経を払わなくてはなりません。実は銀座は非常に地中障害が多い所なのです。近くには9ヶ月も工期の遅れが出ている他社の現場もあり、その理由が全て地中障害です。幸い、うちは地下がありませんでしたから、同規模の現場の標準工期より2か月余裕をみるだけで済みました。残り約2か月で、工事を終える予定です。
うちは、現場に施工図工を置かないルールのため本社で図面を作成しています。設計施工のときは、基本的に3D データをそれぞれ業者に渡して収まりの確認をします。大量にあるので基本的に我々が現場で行っているのは手順の確認です。
また私自身は、大手ゼネコンさんや協力業者の方とBIM の推進活動を行っています。清水は取り組みが早いほうですね。
会社のリクルーティングも担当しています。業界にものすごく興味のある学生もいますが、現場に対して『汚い、危ない』という不安もあるようです。どんどんモノづくりの面白さを伝えていきたいですね。皆さんも、どうぞこの後も見学に来てください。同じ業界で仕事をされている方は仲間ですから。一緒に業界を盛り上げていきましょう。
―最後は、力強くまとめていただきました。

 

 

現場 データ

総合監修:レーモンド設計事務所
設計:清水建設一級建築士事務所
施工:清水建設東京支店建築第3部
工期:2015年3月~2016年8月末
建物用途:ホテル、飲食店舗、駐車場
構造:S造
建物高さ:46.53m
階数:地上13階