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208-1 中目黒

「AOBADAI escalier (青葉台エスカリエ)」撮影:日暮雄一/日暮写真事務所

「AOBADAI escalier (青葉台エスカリエ)」撮影:日暮雄一/日暮写真事務所

 

写真の建物は、今月ご紹介する「青葉台エスカリエ」。escalierとは、フランス語で「階段」という意味です。設計は勝岳史建築設計事務所で、ビルの各フロアへ異なるアクセスを作り、それぞれ階段を独立させて配置しています。近くには、「キンケロシアター」があり、勝岳史建築設計事務所の設計で、弊社が施工させていただいた「AK-3」(ShinCLub121号でご紹介)もあります。3-4階に写真事務所が入った建物は、やはり階段が個別に用意された、個性的な建物でした。中目黒にお店を出そうという方は、同じビルでも他とは違った空間のデザインを好まれる方が多いそうです。小さくても自分の個性を発揮できるこだわりのスペースを求める方が多いのです。
また「中目黒」は、起業しようという若い人が最初に店を構えるには、スペースとしても最適な街だということ。ファッション、美容院、飲食店など、この街でまず開業し、軌道に乗ったところで、青山・原宿などへ、そしてより都心の銀座などで出店するのがビジネスの王道ともいえます。一方、桜の花見シーズンの、目黒川沿いの飲食店は大変な賑わいです。最近では人気グループ「EXILE」のグッズを扱う「EXILE TRIBE STATION」がオープンし、関連の他のお店を含めて、ファンの聖地にもなっているそうです。
そして、スターバックス コーヒー ジャパンも、国内初となる「スターバックス リザーブ ロースタリー」を2018年に中目黒でオープンすることが決まりました。「ロースタリー」は、敷地面積1,200平方メートルで、世界中から調達した個性的なコーヒーを出すだけでなく、スターバックスのコーヒースペシャリストやマスターロースターとの会話も楽しめ、イタリア料理で有名なロッコ・プリンチ氏監修の焼きたてのフードやパンも取り扱うとのことです。
シアトル、上海、ニューヨークについで、東京に世界で4番目のロースタリーを作るとあって、設計は隈研吾氏が行います。既に大宰府天満宮店でコラボレーションを行っている両者ですが、太宰府店は、木組み構造が店の入口から奥へ続いていて、あの参道では、圧倒的な存在感を見せています。中目黒では、どんなデザインが展開されるでしょうか。
 今後も若い人たちの流れが加速しそうな中目黒。楽しみですね。

208-2 AOBADAI escalier (青葉台エスカリエ)

たとえばカンバスのようなテナントビル

 

 山手通りから路地を抜け、目黒川を渡り少し歩いたところにある目黒区青葉台。いわゆる“裏ナカメ”と呼ばれている地域である。中目黒駅から徒歩10分弱と決してアクセスが良いわけでないにもかかわらず、目黒川沿いの賑やかさと住宅街の閑静さが調和した独特の雰囲気を持つこのエリアは人気アパレルショップや美容院、美食の名店などが点在し、“わざわざ”人々が集まる中目黒でも人気の高い地域である。
 敷地はそんな裏ナカメの小さな交差点の角地にある。クライアントから『裏ナカメの新たなアイコンになり、個性的でありながらもテナントが個性を出し易い建物にして欲しい』という要望を受け、私たちは『“わざわざ”人々が集まる地域に“わざわざ”お店を出すテナントに好まれるテナントビル』を考え始めた。
 厳しい高度斜線もこの地域のヒューマンスケールを生み出している敷地の特徴として捉え、建物高さを抑えながらも低い階高に対しては逆梁を用いて開放感を演出するなどの工夫を行った。また基準階を設けて容積率を確保することは容易だったが、単純な基準階の積み重ねでは一般的に階によってその価値が変わってしまうため、あえて基準階を設けず、地下1階~地上3階の全ての部屋に対して平面プランや階段でそれぞれの特徴を持たせた。つまり『“わざわざ”その部屋を借りたい』と思えるような建物だ。
 “わざわざ”とは“特別な想いがある”ということである。人々が特別な想いで訪れる場所に、特別な想いでそれぞれのお店を開くことができるテナントビル、それはたとえば自由に絵を描けるカンバスのようなテナントビルである。
(坂井泰之/勝岳史建築設計事務所)
構造:RC造
規模:地下1階、地上3階
用途:店舗
設計・監理:坂井泰之/勝岳史建築設計事務所
設計協力:井上明日香/アトリエイノウエ
構造設計:河合一成/河合構造設計
電気・設備:環境プランナー
施工担当:讃井、望月
竣工:2016年12月
撮影:日暮雄一/日暮写真事務所

208-3 小杉正佳 QUICOオーナー

新しい外壁補修の形に可能性を感じました

 

  今月は、2005年6月竣工した、神宮前の店舗・事務所・住宅のコンプレックスビル「QUICO(キコ)」のオーナー、小杉正佳様に登壇いただきます。
キャットストリートに近い、住宅と商業地区の混在した地域に建つ建物は、地下2階、地上3階。スキップフロアでさらに10層以上の多層構成になっており、斜線制限に沿って、最大限のボリュームを確保するべく、塔屋を持つ不定形なプランになっています。
もともと別の建設会社が施工したものでしたが、その会社が竣工直後に倒産。FRP防水にトップコート塗装を施した外壁は、4、5年前から外壁の一部が破損したり、その補修した部分にさらに水がたまって、建物内部にまで入り込んだりしていました。その都度、必要な補修工事が行われていたようですが、いよいよ本格的な修理が必要となり、小杉様は全体的なメンテナンスを継続的に行うことが可能な地元の工務店を求め、弊社にコンタクトをとられました。
事前調査の結果、いくつかの条件を整理した担当者は、以前、工場併用事務所ビルの屋上で施工した「ポリウレア樹脂」の吹き付けが最適だろうと提案。調査を含め5カ月かかりましたが、梅雨が訪れる前に工事も終わり、ほっとされている小杉様にお話を伺いました。
―2005年には建築雑誌にも掲載された注目物件でしたね。
小杉:設計の先生は国内でとても尊敬している建築家です。でも5,6年前から雨仕舞の良くない箇所が出てきて、その都度直してはいました。が、本格的に直すには、足場を組んで建物全体を修理する必要が出てきました。外壁を覆うと店舗の売り上げが3割は落ちます。それにもともとの施工会社でないと二の足を踏む業者がほとんどです。当たり前ですよね。ほんとに困りました。
施工方法も、もともと壁が薄いので、ガルバリウム鋼板を貼るなどさらに壁を厚くすると建物全体への負荷が大きく、構造計算も必要になる。形も不定形だし、「できれば吹き付けのものが一番」と私も思っていました。「そろそろ、耐候性、耐震性のあるいいものが出てきてもいい頃だ」とも…。提案いただいたポリウレアは、車の塗装、軍関係の設備で、名前は知らないけれどそんなものがあるということだけは知っていました。
結論から言うと、今回施工していただき、ほんと良かったですね。施工前に数値を測ったわけではないのですが、この間も大雨が降ったのに、水漏れはなく、確実に水は止まった感じです。大きな地震で亀裂などがはいらない限り、大丈夫ではないでしょうか。
 そもそも下地処理の段階で、3階の以前補修した箇所を開けたら、溜まっていた水がまるで膿みのようにばっと出て、1階のトイレや2階のキッチンの上など、室内のいろいろな場所の水漏れが止まっていきました。それはポリウレアをかける前にわかりましたね。昔から店をきれいにするようにスタッフにも徹底していて、かなりの時間を割いて掃除します。それだけ手入れすると、店の若いスタッフも建物のことがよくわかってきます。だから皆で「水が止まったな」と話していたんですよ。
店の商品も海外に自分で買い付けに行き、展示会も定期的に開催して、2年先まで予定が入っています。少しはこだわりの品を扱っているので、お客様のためにも、建物の安全・安心はとにかく第一なのです。
―設計のことも含めて、建築にお詳しいですね。
小杉:以前は100店舗近く全国展開していて、それだけ設計の先生と打ち合わせをし、素材などにもこだわりましたから。床の厚みも薄い店舗に入るとすぐわかる。床材の木の扱いが上手な職人を求めて、いろいろな地方を訪れたりしましたね。その後、この1店舗にしたため、今回は工事の間仮店舗での営業は不可能だったので大変でしたが、このポリウレアは施工に負担がないので、いろんな素材に利用可能ですね。テントなんかいいんじゃないですか。特殊な建物、竣工後10年に満たないのに問題が起きて困っているような建物のオーナーには、ぜひお勧めしたいですね。大手町あたりの古いビルではほんとに困っているという話です。
漏水の心配が片付いたところで、今度は2階の改修もお願いしたいと思っています。
―どうもありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

QUICO

場所:渋谷区神宮前5-16-15
設計:坂本一成研究室+アトリエ・アンド・アイ
構造設計:金箱構造設計事務所
構造:S造
規模:地下2階、地上3階、塔屋1階
用途:店舗・事務所・住宅
施工:バウ建設
竣工:2005年6月

208-4 「QUICO 外壁補修工事」行いました 2017年1-4月

前ページでご紹介した「QUICO」の外壁補修工事は以下のような調査を反映して行われました。
1.外壁―仕上げの防水処理は、設計図書による仕様の改質アスファルト防水でなく、ケイカル板下地にFRP防水を施し、トップコートによる色付け仕上げと思われた。外壁に無数の亀裂、破損、欠損が見られ、室内への漏水箇所があったので、下地処理を施しポリウレアの吹付けを行った。
2.屋上、バルコニー、庇の床面は、防水自体はFRPによるものと思われるが、仕上げに張物があった。またドレン廻りはかなり劣化していたので補修を行った。
3.手摺、天井等の鉄部はかなり錆が出てきていたので補修。
4.ウッドデッキの木部―2、3階の南面にあるウッドデッキ床材は日の当たる西方向は乾燥状態だが、当たらない東方向は腐食しつつあったので張り替えた。
今回の工事では、ポリウレアエクストリームで修復。多少爆裂した箇所の凹凸が残ったところもありますが、全体にきれいに収まり、漏水も止まっています。お客様にもご満足いただいています。
米国ライノライニング社の代理店、ライノジャパンの営業統括本部本部長の角田孝道氏にもお話を伺いました。
「昨年、TVで紹介されたこともあり、一般の方への認知度はかなり上がってきています。ポリウレアは、2液混合による化学反応で、高反応性(超速乾硬化)と類まれな物性特性を発揮するエラストマー(弾性特性を持つ高分子結合物)です。2液を65~70℃の高温でスプレーガン先から噴射し、コンクリート・金属・鉄板・木材などほとんどの基材に付着、5~10秒で指触硬化が確認できます。1980年代の初めに開発され、その後商業化が進んだ比較的新しい樹脂になります。耐薬品性、耐摩耗性、防水性などあるのでいろんなところに応用されています。ピックアップトラックの荷台から建築建材、さらには地下マンホールなどにも利用されています。国内では2016年、水道施設の資機材の材質試験をクリアー。さらに「飛び火定」の試験も今後予定されおり、利用範囲の大幅な拡大が期待されています。いくつかの大学との共同研究も行っており、今後も実績を上げていきたいですね」
お問い合わせは下記の通りです。
ライノジャパン㈱ 電話:03-6228-1400