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222-1 ボランティア

「代々木4丁目プロジェクト(Y邸)」 撮影:斎部功

「代々木4丁目プロジェクト(Y邸)」 撮影:斎部功

写真は、このたび代々木に建った住宅です。建て主ご夫妻は、毎朝、近くの参宮橋公園に散歩に訪れ、この高台に家を建てられることにしました。
さらに、奥様はこのたび、お仕事の他にも新たにNPOを立ち上げて、若い人たちの力になるべく活動を始められました。

 

この夏は、酷暑、そして台風の到来が続きました。厳しい気候条件の中、山口県で、行方不明になった2歳の男の子を3日ぶりに発見して一躍有名になったおじいさんがいました。尾畠春夫さん(78歳)です。
大分からやってきて、捜索開始わずか30分で、その子を見つけ出したというから驚きでした。その正体が、「スーパーボランティア」ということで、この言葉も話題になりました。
尾畠さんはいろいろな災害現場でボランティア活動を続けておられ、東日本大震災の時には、500日も現地に滞在して「思い出探し隊」の隊長を務めたということです。
65歳で魚屋を閉じ、その後は年金暮らしをしながらボランティアを続けているとのことで、その体力、精神力に圧倒されました。人生100年と言われるこの頃、誰でもできることではありませんが、70代からでもこんなに活躍できるんだと多くの人が感嘆の声を上げました。

 

日本人はアメリカ人などと比べると、日頃ボランティアに携わる人が少ないと言われますが、こと、災害時のボランティアについては阪神・淡路の時のミスマッチの反省も含めて、統制が取れた効率的な運営がされてきているようです。災害ボランティアセンターにまず登録するなど、行政、現地との連携に従い活動を行うようになっていて、何より自己責任で現地に臨むという大前提があります。
「自己責任」というと何か、「切り捨て」のような意味合いを含んでいるときもありますが、そうでなく絶対に対価を受け取らず、現地に負担になるような行為を慎む、ということで、尾畠さんのような方の実際の行動がそのことを示してくれました。

 

一方で、誰もが被災地まで出かけていける立場ではありません。日常の中で、少しでも地域の役に立てるボランティアに参加することも可能で、例えば、町内の美化運動とか、PTA・子供会の役員など、多くの方が経験されていることでしょう。
ただ、日本では、やはり海外に比べ、特に会社に勤めている人たちのボランティア参加が圧倒的に少ない、ということで、そこでもまた「働き方改革」の話になります。

 

労働力を提供できないときは、「寄付」という形のボランティアがあります。
しかし、そもそも地方創生の目的でスタートした「ふるさと納税」が単なる節税効果ばかりが取りざたされるのを見ると、その貧しさに目を覆いたくなります。日本には「浄財」といういい言葉がありますが、その精神は受け継がれるべきでしょう。使われ方を見届けることも大切なようですが。

 

今回、代々木プロジェクトの建て主の奥様の視点は、今、日本社会全体が抱える問題の改善についてであり、そのような大きな視点で動くパワーもまた、歳を重ねられた経験豊かな方々ならではの活動と思い至ります。

 

いずれにしても「情けは人のためならず」、年齢を重ねてもさらに若々しく生きていく一つの回答なのだと思いました。

222-2 代々木4丁目プロジェクト(Y邸)

 

美しい夕日を眺められる高台の家

代々木の閑静な高台の住宅地に、見晴らしの良い家を建てたいというご希望である。

「夕陽ヶ丘テラス」という建て主からのプログラムは、「リビングと一体になったデッキ」、「車が4台入る駐車場」、「星や月が見える露天風呂」、「茶室」、そして人が集まれて、バーもある「夕陽ヶ丘テラス」など、楽しそうなキーワードが並んでいた。それらすべてを盛り込み、敷地のレベル差を利用した地下1階、地上3階のコンクリート打ち放し4層の建物を作り上げた。

 

敷地は参宮橋公園の近くで、南西側に下がっていく斜面の一番高いところに位置する、かなりレベル差のある場所である。谷の底には、今は暗渠となっている春の小川、渋谷川の源流が流れている。大昔から居住環境として良い土地だったのだろう。近くの参宮橋公園では縄文遺跡も出土している。
平行四辺形の敷地に直方体の建物を単純に置くと、大小2つの三角形が生まれ、それぞれ大きい庭、小さい庭とするところから、設計は始まった。その三角形に島を出したり、岬を出したりするようにデッキを配置している。
地下1階は駐車場、1階はエントランスとバー、2階がリビングダイニング、茶室、3階が夫妻の寝室と露天風呂というプランである。
当初、1階の中庭から2階の島のテラスに向けて外階段を設け、2階の茶室への待合としてみたが、回遊性のある空間がかえって不用心だということになり、階段は外された。
今回は材料を買いに建て主と木場まで行ったり、庇を仕掛けて掛込天井を作ったり、といろいろやらせていただいた感じである。露天風呂は、壁に檜を貼り、天井高を高く取って、テラス側にサッシも開放できるようにし、「星を眺めながら、お風呂に入りたい」というご主人の希望を叶えることができた。
しっかりとしたインフラとしての建築を用意し、周囲との環境調整も上手くいったと思う。植栽は別工事となったが、この後もご夫婦二人でだんだんと手をかけて、建物を成熟させていかれることだろう。
(鈴木孝紀氏 談)
構造:RC造
規模:地下1階、地上3階
用途:専用住宅
設計・監理:鈴木孝紀建築設計事務所
施工担当:間瀬
竣工:2018年4月
撮影:齋部功(⑦を除く)⑦アック東京

 

222-3 新しい家で始まる新しい暮らし 吉森德仁様 柴山ひろ子様

月は、代々木4丁目プロジェクトの建て主でいらっしゃる、吉森德仁様と柴山ひろ子様ご夫妻にお話を聞かせていただきました。

―OZONEのコンペでは鈴木先生の提案のどんな点に惹かれましたか。
柴山:最初にOZONE登録建築家の作品を200以上チェックさせていただき、好きな作品5つを選んで、その中からさらに3人の方々に私たちの住みたい家のポイントを踏まえた設計図を作っていただきました。1日に一人ずつ面談させていただいたのですが、1日目の鈴木先生のアイディアがあまりにも斬新で、2日目、3日目の先生の案も素晴らしかったのですが、もう心が変りませんでした。

 

―ご希望は具体的にはどんなものでしたか。
柴山:明るい家、デッキのある家、リビングが広い家…。でも以前の代々木の家が3階建てなのに階段でひとつながりだったせいで、生活音がすべて筒抜けだったので、私はそういう事を解消してくれる家が希望でした。主人はもう、数日に1度会社に行けばいい役職なのですが、早起きでしてね。私はまだ現役で仕事に行っておりますので、睡眠不足になってしまいます。それで生活の音が別になる家にしたかったんですね。他にもいろいろありましたが、先生の設計には総ての条件が入っていました。特にコンクリートのRの外壁に目が釘付けになりました。2階の飛び出したデッキのアイディアも、他の方にはないものでした。
吉森:僕は開放感のある露天風呂が欲しかったね。月や星が見えるお風呂がいいと思っていたけど、窓が全開できるのが良かったね。

 

—お二人で生活のルールのようなものはありますか。
柴山:最近は、この引っ越しで忙しい日々ですが、以前はよくカラオケに行ったり、小田原まで足を延ばしてお魚料理も食べに行ったりしてましたね。あまり載せない方がいいかしら。実は、私たち二人とも連れ合いをなくした再婚同士なんです。
吉森:いいじゃないの、載せてもらいましょう。70歳を過ぎてね。連れ子はそれぞれのワンちゃん。私の方はシュナウザー(13才男の子)、名前が 徳治郎、彼女の方はチワワ(14才 女の子) 、名前が 空(ソラ)。飼い主も子供も高齢だね(笑)

 

―そうだったんですか。
柴山:私は夫を亡くして、まる14年、こちらは8年ですが、10年も一人で暮らすと、人の身の回りの世話も嫌でしょう。知り合った頃は、週末だけのお付き合いでと思っていたのですが、毎日一緒にご飯を食べるうちに一緒に暮らしたいということになって。それで娘たちに以前の家は譲ってね。再婚に反対するかと思って恐る恐る尋ねたら、もう大喜びしてくれまして。世田谷の大きな家で一人で住んでいるのが、実は心配だったみたいです。主人が亡くなってから仕事を引き継いで頑張ってきたのですが、10年を過ぎた頃から無性に寂しくなって、仏壇に向かって「私、10年も頑張ったからもういいでしょう、お父様好みのボーイフレンドを誰か見つけて」と言ったんです。そうしたら、3か月で出会いがありました。
吉森:建築の話、しましょうか(笑)

 

今まで山中湖の別荘の方で毎年、もちつきをやっていたんですが、もうこちらでやろうと、年に1度集まる場所を作りたいと思いました。新しく「夕陽ヶ丘テラス」という名前で、バーもあります。折れ戸を開くと、アプローチとひとつながりになり、かなり広い場所ができました。
それから、山中湖の家には暖炉があったのですが、今回OZONEに行った時に、東京ガスのショールームで暖炉タイプのストーブを見つけまして、リビングに後付けで暖炉コーナーを作ってもらいました。

 

―レンガがいいですね(碧南煉瓦採用)
吉森:まきストーブは都内では難しいことも多くて、以前の代々木の家にもあったんですが、燃やしたら苦情が来るかと、1度も使わなかったんです。「火」は見ているだけで気持ちが暖かくなるし、リビングは床暖房も入っていますが、このストーブもつけていれば、寒い冬でも間に合うかなと。

 

―すてきなグラスが並んでいます。
吉森:彼女は器が好きでたくさんあるんですよ。僕は3種類もあれば十分。
柴山:お料理によって器は変えますもの。
吉森:そうそう、お茶が好きだから、お茶室もこの人の希望でしたね。
柴山:前の主人が亡くなる前はお茶三昧で、教えてもいました。主人が亡くなってこの10数年、お茶どころではなくなっていたのですが、今回作っていただきました。
吉森:鈴木先生も、茶室の設計はあまり手掛けられたことがなかったそうですが、今回かなり作りこんでいただき、大したものだと思っています。
それから代々木の家には和室がなかったから、1階にも2畳の和室を用意し、庭いじりをした後の休憩や急なお客様にも泊まってもらえるようにしています。

 

—これからいろいろと皆様でお楽しみいただける時間が増えそうですね。
吉森:でもこの人、また会社を興して何かやりたいらしいんですよ。
柴山:この間NPOを立ち上げて、つい1か月前に認可されました。私はある建設会社の役員もさせていただいていますが、会合では建設関係の若い方々の出会いの場がないということをいつも聞いております。日本の人口が減り続けていて、この先、孫達の時代が大変な事になる事が心配で、結婚する気があるのに出会いがなく、結婚出来ない方々に、営利目的でなくお手伝いをさせて頂くことができないか、と立ち上げました。民間と違って、12,000円の年会費だけで、成婚報酬なども取りません。
吉森:100歳まで頑張る、と言ってますよ。

 

―素晴らしいお話を聞かせていただきました。本日は、どうもありがとうございました。

222-4 ナインアワーズ 蒲田」(蒲田プロジェクト)オープン

 

羽田空港へのアクセスが良好な蒲田駅近くに、スタイリッシュなカプセルホテルがオープンしました。
繁華街と駅の中間地点に位置し、喧騒から離れた建物の設計は、芦沢啓治氏。建築・インテリアだけでなく、家具やプロダクトのデザインを幅広く手掛け、2011年には、東日本大震災後の被災住民が暮らしを取り戻す一助として「石巻工房」を設立し、そのDIYをテーマにしたプロダクトブランドのディレクターとしても知られています。
「ナインアワーズ」は、ホテル滞在中の「シャワー」(1h)+「睡眠」(7h)+「身支度」(1h)という3つの基本行動を時間に置き換え、「9h」と名付けられています。機能的かつ高品質なトランジットサービスを、都内だけでなく、成田、仙台、新大阪などでも展開しています。
特に、蒲田ではフライトまでの空き時間を有効に利用できるよう、フロント前にデスクスペースを設置、プライベートを確保して短時間でも集中できるスペースとしています。落ち着いた雰囲気のインテリアは、素材や色、照明にも工夫が凝らされ、クリエイティブディレクションは柴田文江氏、サイン&グラフィックは廣村正彰氏と、国内外で活躍する一流のデザイナーと協働しています。
また、部屋という概念を捨てたカプセルホテルは、宿泊に限らず、24時間、お客様の都合で、仮眠やシャワーでの利用も可能。身軽に街とつながる施設となっています。

所在地:大田区蒲田5-24-4 TEL:03-5713-0077
構造:S造
規模:地上11階
用途:ホテル(カプセルホテル)
設計:芦沢啓治建築設計事務所所有:レーサム
運営:ナインアワーズ
営業時間:24時間 年中無休
客室数:147室(男性:63室、女性84室)
URL:https://ninehours.co.jp/kamata

 

<メニュー・システム>
宿泊:4900円~(チェックイン13:00~、チェックアウト翌日10:00)
仮眠:1000円~(最初の1時間は1000円、以降1時間ごとに500円。利用可能13:00~21:00)
シャワー:700円、デスク:300円/h、24時間いつでも利用可能。最大料金2000円(24時間)