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197-1 ミニマリズムとポケモンGO

写真は、この春に完成した賃貸併用住宅です。建物南側に開かれた大きなテラスから、目黒川の桜を一望できます。設計者の小川晋一氏は、広島を拠点に活動をスタートされ、東京にも進出、新宿副都心の高層タワーの上層階に事務所を設けておられます。現在は、週の前半は東京事務所で関東近郊のお仕事を。木曜と金曜は長年教鞭を取られている近畿大学工学部のある広島へ。そして土日は名古屋や関西、その他の地域に赴き、お客様と打ち合わせを行う日々とのことです。
 そのシンプルでミニマルな設計に対しては海外からの設計依頼も多く、特にタイのカオヤイに建つ「150M WEEKEND HOUSE」は、幅11m、長さ150mのスラブに挟まれた「今世紀最長の家」と言われています。天井高6mのフォーマルリビング、大きなジャグジールームやフィットネスルーム、そして専用のバスルーム・リビングルーム・ベッドルームを持つ個室が、一直線に入っています。どの部屋からも国立公園の山々の景色を楽しめて、屋上デッキに設けられた40mのプールは、まるで空に浮かぶビーチのようです。

このように、豪邸というべき別荘や海沿いの住宅などの設計が多い小川氏ですが、著作物やインターネットで設計手法が広く認知されることになった点も前向きに分析されています。昨年出版された作品集、『ミニマルイズマキシマル』の売り上げは予想以上とのことで、建築関係者だけでなく、一般消費者の方の購入が増えている点もこれまでにない動きだと感じられているようです。写真のクォリティの高さもさることながら、やはりニーズがそこにある、と思います。

 

モノから開放された、極限までシンプルな暮らしを実践するミニマリストを志向する人は、ここ数年増えているようです。電子書籍にすれば、本棚の大量の本は不要となり、買い物もWEB上から注文すれば、時間が節約できる上、次の日には自宅に配達されるのでストックを余分に抱え込む必要もありません。IT技術の進歩で得られた便利な暮らしを享受する人々。そんな人たちが住みたいとあこがれる究極の家は、「余計なものを置かない、緊張感のある、管理しやすくて、それでいて良好な外部環境を取り込める大きな空間」に必然的になっていくのではないでしょうか。

7月22日、ご存知の通り、アメリカなどで先行配信されて大人気だったスマホのゲームアプリ「ポケモンGO」の配信が日本でも始まりました。GPS機能を利用して、スマホ画面を通して現実の場所に現れる、お馴染みポケモンのキャラクターを捕まえていくゲームです。
実際に出歩いてキャラクターを探さなくてはならないため、これまで家で引きこもっていた人たちが一斉に外に出てきたというウソのような話や、キャラクターを捕まえるアイテムを得る「ポケット」や「ジム」に設定されたマクドナルドでは、大量の顧客が戻ってきたという声が聞かれました。

 

一方で、駅近くや繁華街でスマホ画面ばかり見ながら歩き回る人が数多くみられ、交通事故や不法侵入、他人にぶつかるなどの迷惑行為が問題になっています。

マイナスばかりではありません。とりあえず近所を歩き回ることから始めた人が、「自分の住んでいる地域にこんな名所、スポットがあったのか」と新たな発見をするなど、これまで興味を持たれなかった地域への認識が高まることも予想されます。

 バーチャルな世界の出来事で現実の人間を動かす画期的な仕組みは、どのような可能性を秘めているのでしょうか。これからも目が離せません。

197-2 BUENACASA AOBADAI

川沿いの桜を臨むロケーションを活かした、のびやかな都市型住宅

目黒川の川沿いを眺められる敷地に計画された、賃貸併用住宅である。1階は、駐車場と事務所、地下1階、2-3階に賃貸住宅が入り、4-5階がオーナーの住宅である。
オーナーは、当事務所の出版物やインターネットで作品を見ておられ、建築にも詳しく、シンプルな空間づくりに共感いただき、ご相談を承ることになった。
ミニマルな空間は、マキシマルな空間につながる。開口部を限界までとって、外部環境を大きく取り込み、都会の景観を楽しみながら、フレキシブルに室内を利用することができる。オーナーの母上の希望で、室内は白に統一されている。打ち合わせに寸法入りのラフスケッチをお持ちになるなど、クリエイティブな方で、家具などもご自身で選ばれている。キッチンやバスルームなどは内側に収め、景色を楽しめるLDKは、テラスとつながる長い空間になっている。
賃貸部分も細長いワンルームで建物の南ファサード側から北側まで貫いている。自由度の高い空間利用を実現していただけると思っている。

(小川晋一氏 談)

構造:RC造
規模:地下1階、 地上5階
用途:共同住宅、事務所
設計・監理:小川晋一都市建築設計事務所
施工担当:村山、岡本
竣工:2016年3月
撮影:小川晋一都市建築設計事務所

 

197-3 湯島Kビル

アルミニウムのルーバーが美しい、アルミ製作会社の東京事務所

 

関西のアルミニウム製作会社の東京事務所の建替え工事である。もともと敷地の東南側の路地に面して、事務所の入るビルが建っていたが、再開発により周辺の駐車場や中小ビルが整理され、大きなマンションに生まれ変わることになった。代替え候補地として、湯島聖堂に通じる17号線に面したこの敷地が選ばれ、実施計画がスタートした。
この敷地は、直下を地下鉄が走っているため、地上の建物を新築する場合、建築制限があり(建物荷重8t/㎡まで)、道路自体も高低差があるという条件を考慮しながら、なるべくオープンな雰囲気のビルを、と考えた。ただ、開いたビルということでなく、ルーバーで視線を遮りながら明るさを取り込み、そのルーバーもアルミを用いて、会社の業を示す、シンプルで、洗練された材料のイメージを持たせた。

建物の中央にコアを設け、そこに水周りを置き、その隣に階段室を配置した。各フロアは最大限の容量を取るよう計画した。既に両側に建物が建っているので、前面となる北側と建物奥の空き地となっている南側(将来も3階以上は建たない)に大きく開口部を取った。
1階は、角度を振って、なるべく広いエントランスとなるようにし、隣家に接するアプローチには壁面緑化を設え、そこにアルミのスラブ(鋳塊)に刻印し板状にスライスしたものを銘板として設置した。同様に、部分カットしたアルミの鋳塊を建物の定礎として、前面道路沿いの擁壁に張り込んだ。道路の2本のイチョウの木が、ビルに彩を添える。

3階にはオーナーの会社の東京事務所が入り、当事務所も以前の建物に入居していた関係で、最上階に入居させてもらうこととなった。天井高も大きく取り、本棚や作業台などの製作家具を設えて、準備が整った。旧知のオーナーと新たな気持ちで仕事に臨むことができる。

 

(有馬立郎氏 談)

構造:S造
規模:地上4階
用途:事務所
設計・監理:
有馬立郎/計画意匠研究所
竣工:2016年6月
担当:鈴木
撮影:アック東京

 

197-4 「SHINCLUB 展 -渋谷の建築屋200カ月間の記録」 開催のお知らせ

2000年4月からスタートしたこの「SHINCLUB」も11月でいよいよ200号を迎えます。これを記念してバックナンバー全てを一般にご紹介することにしました。
会場は渋谷駅前の「ヒカリエ」8階。展示に続き、弊社施工の「表参道けやきビル」で2014年度日本建築家協会優秀賞を受賞された團紀彦氏を迎えて、「ゲストトーク」を開催します。
その後、会場を同じ「ヒカリエ」11階に移し、SHINCLUBの掲載にご協力いただいた方々をお招きして改めて感謝の粗宴を開かせていただきます。 どうぞ、よろしくお願い申し上げます。