141-2 La Tolda

用途: 竣工年月: 場所: 設計: 構造: 規模:

撮影:上田宏

「建物の地域性を重視したテナントビル」

渋谷から原宿にかけて、明治通りの東側に並行して走るキャットストリート。若者に人気のファッションや雑貨の店が建ち並ぶこの遊歩道は、もとは「渋谷川」という川の暗渠である。東京オリンピックの頃に蓋をされたが、建物のオーナーは、この川の周辺の景色に愛着があった。
私は、建物は「ここでしかありえない」という場所の必然性がある、といつも思っている。ここでは、「渋谷川」という思い出があって、「川」を喚起させるイメージが成立する。建物の名前は『La Tolda』―イタリア語で「甲板」という意味である。「川」というイメージにつながり、オーナーの街への思いを表現できれば、と提案した。
テナントビルは不特定多数のテナントに対し、設計者側としてあまり個性的なデザインを押し付けるわけにはいかない。テナントの個性が活かせるキャンパスであればと思う。建物が強烈な印象では困る。色づけも主張しすぎてはならない。テナントが入って、初めてその雰囲気が動き出すことが必要だ。
構造は、敷地が小さいのでRC造よりもS造とし、天井をそのまま仕上げとして使えるよう、床板は在来のコンクリートスラブとした。意匠的には、仕上げ、色、空間等を対比的に表現することにより、お互いがより効果的に浮かび上がることを意図した。
例えば、1、2 階の壁は、ガラス張りにしてなるべくオープンにする一方、3 階はオフィス利用も考慮してクローズに。色使いも、1,2 階は、外壁の帯部分の色は黒、3 階は白と変えている。S造では、仕上げ材の仕様がガラスとスチールサッシ、金属パネルとクールになりがちだが、建物床にウッドデッキを採用することで、ウェットな部分を生み出している。エントランスの漆喰の壁と外壁の帯の鉄板も色と質感を対比させている。

 3 階のオフィスは、われわれの事務所が入居することがあらかじめ決まっていたので、照明器具に内装、仕上げ等、に新しいものを取り入れてみた。ストリート側の公園を見下ろしながら、オープンなデッキスペースから、エッジな若者文化の発祥するこの場所の活力を楽しみたい。

(溝口健二氏 談)

所在地:渋谷区
構造:S造
規模:地上3階
用途:店舗併用住宅
設計:溝口健二/建築設計計画
竣工:2011 年10月
施工担当:柴田
撮影:上田宏

2013年4月4日 at 2:00 PM