111-2 N COURT 動坂
明るい中庭と回遊性を持つ賃貸併用住宅
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①中庭を東側から望む。中央階段の折り返しにはコンクリートの突起を設けて、植木などが置ける遊びのスペースとした
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②オーナー邸デッキ。左手内側がエレベーターホール
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③オーナー邸リビング。中央にダイニングテーブル、その奥にアイランドキッチン、メインキッチンと続く
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④中庭側からリビングを見る
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⑤中庭を西側から望む。中庭の外階段の金物は、現場溶接だと金物とコンクリートの接合に遊びがなくなり、コンクリートのクラックをより呼ぶことになるので、ボルトで取り付けることにした
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⑥賃貸部分 204 号室。1650 ミリ幅のキッチン、ウォシュレットや、仕切り用の可動家具、多めの収納など、 入居者のニーズに応え、設備は充実している。入居シーズンのピークを過ぎたが、低めに抑えた家賃設定で竣工後 1 カ月を待たず全室入居が決まった
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全景
田端駅から徒歩8分。ここは大規模な区画整理が行われ、周辺でマンションへの建替えが進む地域である。オーナーの「特徴のある建物を建ててほしい」という希望を尊重し、外観はコンクリート打ち放しのシンプルなファサードでありながら、建物のプランの中央に中庭を設け、セミパブリックスペースとして、デザインの中心的な役割を持たせた。
中庭の足元には、当初、“Villa PALAZZETTO”(設計:カルロ・スカルパ)をイメージして、穴あきレンガを利用したかったが、既製の穴あきレンガの色味が意図に合わず、渋めの色の普通のタイルを交互に並べ、間にモルタルを埋めていく手法をとった。ヨーロッパ風と和風の雰囲気を併せ持つ、タイル屋の丁寧な仕事ぶりが映える箇所である。
中庭中央に植栽を設け、丈夫で耐陰性が強いヘデラ(アイビー)を植えた。中央には落葉樹のカツラを入れる予定である。ほかにも建物外側の 1 階の植え込みにシャラの木を加えている。もとは造園会社の設計部門としてできた事務所のため、ランドスケープにはこだわりを持っている。
最上階のオーナー邸へは、中庭の外階段かエレベーターを利用する。住戸は、口の字の内側に通路を設けた回遊性のあるプランとし、LDK はポリカーボネイトの引戸でフレキシブルに廊下と仕切り、来客時にも視線をさえぎることができるようにした。キッチンは、通常のキッチンと、高齢の母君のためのアイランドキッチンを設けている。現場で天井付きのフードを埋め込み、アルミでキッチンパネルを作成した。また東側廊下にはピアノと小さなギャラリーコーナーを設置した。家族それぞれが個室を持ちながら、お互いの気配が 1 日中感じられ、大切に思う気持ちが存分に伝わる住宅となったのではないだろうか。
(真栄史郎氏談)
構造:RC 造
規模:地上 3 階
用途:共同住宅
設計:真栄史郎/ GA 建築工房
施工担当:寺井
竣工:2009 年 4 月
撮影:アック東京