190-2 カルツェドニア新宿ビル

用途: 竣工年月: 場所: 設計: 構造: 規模:

文字情報であふれた街に、建築そのものの力を取り戻す

クライアントは、グローバルな活動を展開されている不動産投資会社である。建築デザインについても「その街で明確なコンセプトを持つ、インパクトのある建物を建てる」というこだわりを持っている。当事務所ではこれまで「ザ・ジュエルズオブアオヤマ(2005)」、「デビアス銀座ビルディング(2007)」、「ジ・アイスキューブス(2008)」などを設計しており、単なる「クライアント」と「設計者」という関係を超えて、ものづくりをしていくパートナーシップの関係を共有している。
今回の建物は、新宿の目抜き通りに面して「間口4m、角地」という小さな敷地に建つテナントビルである。周囲は文字情報であふれた大きな看板建築が建ち並び、薄く高さ制限のあるプロポーションの今回の計画には、コントロールされた美学が求められた。(すなわち、内部空間の最大化、店舗利用空間の確保、縦横比の特殊な構造の解決、それらを限られた工事時間の効率的な利用で行うという厳しい条件である。)
外観は、内部がよく見えるガラスファサードとしている。昼は小さいスカイスクレーパー、夜はランタン状の建物となって、周囲に存在感を示す。細長い内部空間は、スキップフロアになっており、前面道路に面する南側フロアの3階では1.5層の高さになる。吹き抜けの中央階段が店舗の回遊性を生み出し、店内をめぐる人の様子がよく見えるようになっている(写真②③は仮設階段)。

 一般的に店舗は、街に対して、下層階から上層階に行くに従い認識しにくくなっていくものである。だが上層階にも魅力を持たせる必要がある。ここでは周辺の建物と高さを合わせるために工作物を設けて、看板ではなく建築のデザインで街並みを作ることを試みている。
この界隈一帯では、建築的な魅力というよりは、むしろ店の名前そのものの文字情報で直接、外観を競っているものが少なくない。建物の情報を認知するときは、文字情報だけでは、実は遅い。建築は全体のデザインで作っていかなければならない。それがなければ建物、ひいてはその街の魅力そのものがなくなっていく危機感をおぼえる。
今回、入居されるのはファッションブランドであり、建物の表情として店舗内部の様子を見せることは重要なファクターとなる。その中での人々の動きこそが、外部へのメッセージとなり、人々のにぎわいをつくる。街本来の活気を見せるために、建築のデザインが街並みを作る可能性を再認識したい。

(光井純氏 談)

所在地:新宿区
構造:S造(一部SRC造)
規模:地下2階、地上3階、工作物
用途:物販店舗
設計・監理:光井純アンドアソシエーツ建築設計事務所
施工担当:岩本、川崎、鯨津
竣工:2015年9月
撮影:アック東京

2016年1月13日 at 2:40 PM