47-2 田園調布M邸

「外国人が日本で家を建てるということ」

M・Sさんは、シアトル出身のアメリカ人です。外資系メディア・カンパニーでAsia Head of Sales として仕事をされています。学生時代は北京師範大学(Beijin Normal Univ.)で中国語を学んでいましたが、1989年、「天安門事件」に遭遇し、中国に取材に来たCNNの現地ガイドとして活躍、その後、香港で日本人である奥様と出会い結婚、今では3人のお子様に恵まれています。今回弊社施工で家を建てられたスミスさんに、設計の鈴木基紀氏(空間設計社)とお話をうかがいました。

-ほとんどの外国の方が、会社の補助で賃貸住宅に住んでいる中、日本でなぜ家を建てようと思ったのですか。
Mr.S:これからもアジアで仕事を行なっていくし、自分の子供の教育もあるので、それなら財産として残る形で住宅を建てたいと考えました。そして、家を建てるのなら価値が変わらない、古くからある由緒ある町をまず考えました。田園調布は、危険もなく、よい環境です。さらにここは通りから一本入っており、車の出入りもなくプライバシーも守られます。高台なのでほんとに景色がいい。何しろ富士山まで見えるんですから。
-家を建てる方法としては、いくつかの選択肢があったと思うのですが、なぜこの設計・施工の方法を選んだのですか。
Mr.S:そうですね、ハウスメーカーは、建物がきれいで早く出来るのですが、素材がいつまでもつのか(lasting)、不安に思えました。 建売住宅には、住みたいと思える家が一つもありませんでした。仕切りが多すぎて・・・。

奥様:入るなり、「NO」でした。壁をトントンたたいて、materialがcheapで満足できないようでしたね。

Mr.S:最初にもちろん中古住宅を修繕することを考えました。父が一時建物のリノベーションを手がけていましたから、小さいときから建物をデザインするのを見ていました。しかし、日本の中古住宅はあまりに古かったり、せまかったり、修復しなくてはならない部分が多すぎて結局仕事量が多くなる。それであきらめました。
奥様:3歩入ったら、もう見ないんです。shockだと言いまして。(笑)
Mr.S:大手ゼネコンの設計施工でも良かったんですが、親しくしている不動産会社の人が辰を紹介してくれまして、社長が正直で率直ですし、設計の鈴木さんの仕事にもとても満足しています。

-それにしても、Sさんは図面を見て実際にどうなるか、きちんとイメージできるようです。
鈴木:試行錯誤を重ね、基本設計には5ヶ月を費やしましたが、Sさんは図面をよく読め、ロジカルな思考展開が出来ると感じました。どこかで勉強されましたか。アメリカではこのような建て方は普通なのですか。
Mr.S:いえ、専門に勉強はしていません。好きなんですね。アメリカでは2x4の住宅がほとんどです。規格化住宅ばかりです。家具職人のダレン氏に今回の設計図を見せましたが、「日本の設計者はこんなにたくさんの仕事をするのか」と驚いていました。あちらでは大きな図面はせいぜい4,5枚ですから。
奥様:主人は一つの事が納得できないと、次に進まない人なんです。だから、私はお任せでした。
Mr.S:そういう意味では僕はラッキーですね(笑)。夫婦が二人とも自己主張していたら、家は建ちませんね。
鈴木:今回日本で家を建ててみて、日本の建設業界について何か感じた事はありますか。
Mr.S:キッチンなど家具一式は全て父の代から親しくしているアメリカの職人に注文しましたが、運搬費を入れても日本の既存のメーカーよりもかなり安く出来ました。いろんなものが高すぎます。素材も欧米では質の良いものが安い。日本では土地も高いし、アメリカなら同じ金額で豪邸が買えます。でもこの家は、日本風なところと欧米的な素材がミックスされたいい家になったと思います。日本の木造の伝統技術は本当にすばらしいですね。軸組みなどには感心しました。私は今回のプロジェクトをとても楽しむことが出来ました。
―地鎮祭や上棟式なども設計の鈴木さんの英訳でご理解いただき、楽しまれたようですね。本日はありがとうございました。

2004年2月5日 at 4:25 AM