38-2:Park Lane Court(パークレーンコート)

用途: 竣工年月: 場所: 設計: 構造: 規模:

中央区の人口が増えています。平成11年から15年までの5年間で73,706人から86,358人、世帯数も36,427から45,650となり、都心回帰の風潮がはっきりとうかがえます。(中央区住民基本台帳調べ)
この春、弊社で竣工させた中央区の賃貸マンション+専用住宅(Park Lane Court) の建て主であるⅠ様は、「東京ゆかた」という会社を経営している女性です。周辺の繊維問屋、メーカーが次々と廃業していく中、独自路線での商売を続けています。Ⅰ様にお仕事、そして地域の変貌について伺いました。

―日本橋のこのあたりは繊維関係のお店が多いとうかがっていますが・・。
I様:そうですね。昔は「堀留」と言ったら呉服関係の問屋が軒を並べていましたが、2,3年前から廃業してどんどんマンションになるところが増えています。

―でもそんな中で繁盛されていると伺ってます。
I様:いえいえ、そんな楽ではありません。うちは浴衣ばかりでなく、新舞踊の同好の方がお客様。正絹ではなく、ポリエステルに作ってもらうものが中心です。単価は安いから利益をあげるのはなかなか大変です。私共の会社はカタログ販売の製造卸業で、電話やFAXで注文を受けています。浴衣や着物だけでなく、和装小物全般も含めて2400点位扱っています。
踊り、祭り、和装業務の3つが主です。2年に一度カタログを発行し、売れ筋商品は引き続き出していきますが、デザインは毎回あれやこれや必死に考えています。例えば、この踊りの衣装「絵羽」などは、派手でなくてはならないから、光る素材、金などを多用して、斬新なものを描いていきます。少量でもストックしておかなくてはならないので、在庫調整は大変です。

―ホームページも拝見しました。若い人向けの袢天も扱っていますね。(「お祭り天国」http://www.tokyoyukata.com)
I様:この2月から立ち上げました。すぐに営業に結びつかなくても、オリジナル製品を作っていることを知ってもらいたいと思っています。
「よさこい祭り」って知ってますか。高知や札幌で盛んなイベントですけど、100人くらいで鳴子を持って踊りながら、チームで競い合うものです。みんな派手な衣装を作ります。

―最近、衣食住の世界でも和のブームが再び起こっています。
I様:日本の伝統文化は大事にして守っていきたいですね。でも私共の商品のお祭袢天などは、昔からの伝統的な柄、形を基にしながら、和洋ミックスした新しいデザインのものを常に考えております。アパレル感覚で商品作りをしていかないとお客様にあきられてしまうのではないかしら。

(Ⅰ様は、商品のデザインにご自身もかかわっています。桑沢のインテリア科出身でいらっしゃいましたが、当時はインテリアコーディネーターが女性の仕事としてまだ確立されていませんでした。ファッションにも興味があったので、家業を継がれたそうですが、女性ならではの苦労もずいぶんとされたようです)

I様:呉服業界の独特の慣習がありましたが、今思うと、そんなことは腹立たしくもないですね。悲しいのは、せっかく精魂こめて作り上げたものが売れないことです。でもこのままでは、文化がなくなってしまう、だから伝統工芸にはそれ相応の対価を支払うべきなんです。京都の和工芸は分業制になっていて、10工程くらいあるうちのどれかひとつの店が欠けても大変なことになります。職人がいないんですから。呉服業界から他へ転身して、といってもアパレルのように、常に市場に分かりやすい形で提案して、だめなら次のデザインのラインで行く、なんてことが出来るところはとてもありません。

―商売をやめる店があり、その後にマンションが建って、人口が増えているのをどう感じられますか。
I様:近海ものを扱っている、いい魚屋さんが高齢で廃業され、おいしい魚が食べられなくなってがっかりしています。それから、外資系のコーヒーショップやどこにもあるファーストフードの店ばかりが出来て、若い人たちはそういうところが好きなようですが、普通の買い物をする店がないですよ。夕食のおかずを主婦が自転車でデパートに買いに行っています。
今度公団が大規模な団地を建てるでしょう。都心に近い、静かで住みやすい。でもどこでみんな買い物するのかしら。こんなにマンションばかり建って、将来は空家が増えると思うんです。だから自分のマンションは普通とは違う付加価値をつけました。

今回家作りをして、インテリア関係などは、日本の物では機能もデザイン的にもあまり気に入った物が見つかりませんでした。ファッションでは、日本はセンスの良い商品がいっぱいあるのに。
インテリアの分野も今後期待していきたいですね。

―ありがとうございました。

<編集部から>
昔ながらのご商売を続けながら、中央区に生き残れる人は、ごく少数の選ばれた人たちなのかもしれません。世の中の大きな流れを常に見据えて、時代にあった新しい方向をビジネスに取り入れていく―そこには、自分のこだわりに対する自信が必要不可欠です。意志のある個人の仕事こそ、ほんとうに世の中を動かす原動力になるのだと思います。「都心に暮らす」ということは、そのような個人の暮らしを大切にしてこそ意義あるものになるのでしょう。

 

2003年5月30日 at 2:29 PM