32-2 駒沢の家

用途: 竣工年月: 場所: 設計: 構造: 規模:

 

先日「プロジェクトX」というTV番組で、カー・ナビゲーション・システムの開発に成功した会社が取り上げられていました。番組の中では、同社の社員が、家族サービスのため休日ドライブに出かけ、
世田谷のとある町に迷い込んでしまって、出られなくなった苦い経験が開発の発端と紹介していました。ほんとに世田谷は道が入り組んだ住宅密集地。都心に近く便利ですが、後から建物を建てる人は、近隣環境に配慮しながら、自分たちの快適な暮らしを守るために工夫が必要です。

9月にお引渡しした、駒沢公園近くのH邸でも、ご主人の第一の希望は、外からの視線を遮るため、窓は極力小さく、塀も高く、というものでした。一方で、光や風を十二分に室内に取り込んでほしい、と
いう贅沢なご希望。でも厳しい条件だからこそ、生まれるアイディアというものがあります。一見すると相反する課題を解決することこそ、家作りの醍醐味といえるかもしれません。

このH邸では、基本となる建物全体の自然換気を、南北方向、上下方向の2つの流れで考えました。2階テラスの植栽の外壁にあけられた丸窓から、北側キッチンの窓への南北の流れ。下からは地下室の換気口から階段室を通じて上階へつながる上下の流れ。2つの流れは、効果的に機能しています。この階段室を通して上階からの光が地階まで届きます。また小さい窓の網戸の利用がスムーズに行われるよう、1階の窓には、内倒し、ジャロジーを採用しています。そのほか各部屋の窓は、奥様の希望により、目線の高さを避け、高窓か地窓にしています。高窓は排気・採光面で利点があり、地窓は給気の面で意外に効果大です。
家庭内で一番給排気が気になるのは、ダイニングとキッチン。換気口と給気口を数箇所設け、特に、調理するキッチンには、ショートサーキットの考え方を優先させて、換気扇のすぐ近くの壁面に給気口を設けています。通常の家庭の換気扇はその出力に比べ、給気が効いていないといわれます。それで換気扇の音が予想以上の騒音になっている場合があります。気密性の高いマンションなどでは、換気扇を廻したとたんテラスから「ビュービュー」とうなり声がしますね。排気する空気量に給気が追いついていないのです。
内装材も吸放湿性効果のあるものを使用しています。壁は打放しが基本ですが、部分的にラフィットクロス(木から生まれたビスコースレーヨン糸を主原料にした織物壁紙)を貼っています。傷つきやすいものですが、有機溶剤、可塑剤も使用していないので安心です。室内の湿度が高くなると水分を吸収、乾燥すると発散します。地下室、寝室の天井には珪藻土を塗り、さらに吸湿、消臭機能を持たせました。2階リビングダイニングの3mの天井には、MKボード(セラミック混入木毛セメント板)を打ち込み、あらわしとしました。コンクリートから放出されるアンモニア成分を吸着する性能も持っており、弊社でも以前から打ち放しの建物に多く採用しています。
そのほか、床は、テラコッタ風タイルを使用し、外のテラスのタイルは、同じタイルに滑り止め機能を持たせました。タケイ式躯体防水を採用して、発泡スチロール材の断熱材を敷いた上に貼っているのでメンテナンスも容易に行えます。以上のように、換気を熟慮した建物の構造とあわせて、吸放湿性のある内装材を随所に採用しているため、空気はさわやかです。
まさに「呼吸する家」、シンプルでありながら、機能性を重視したデザインに、お施主様も満足されています。

写真キャプション⓪全景 ①2階リビング。左側ガラス面の向こうは階段室。右側の西面は外壁がガルバリウム鋼板の外断熱。天井はMKボード②太陽光自動追尾システム「サンヨーソーライト」の自然な明りが天井から注ぐ。プリズム採光で年間を通して常に明るい自然光を導く。残念ながらこの秋製造中止が決定。③2階ダイニング。高い天井とテラコッタの床。奥に見えるキッチンの壁が珪藻土タイル。油も水分と同じように吸収し表面に後が残らない。④2階リビング脇の和室。天井は珪藻土を塗っている。⑤玄関。⑥ 1階玄関から階段室が下階まで差し込む。⑦1階階段室脇のスペース。大きなガラス引戸はご主人のアイディア。建物。⑧屋上。2階の室温上昇を抑える断熱材として敷いた緑化用ヤシガラマットとソーライトの天窓。

所在地:世田谷区
構造:RC造
規模:地下1階、地上2階
用途:専用住宅
設計・管理:辰
竣工:2002年9月

2002年9月13日 at 1:59 PM