トップ4項目でご紹介しています。全ての記事をご覧になりたい方はバックナンバーのPDFをご参照ください。

247-1 RC造で

写真は、6月に竣工した恵比寿のテナントビルです。東京メトロ日比谷線の恵比寿駅からは徒歩2分、JR山手線・埼京線・湘南新宿ライン恵比寿駅西口からも徒歩4分の好アクセスです。敷地はヒューマンスケールの道路に面しており、賑わいのなかにも洗練された落ち着きが感じられるエリアです。
幅広く事業を手掛ける事業主様から見ると小さな規模のビルですが、今回敷地の特殊性から、少しデザイン性のあるビルを自社所有として利用されたいというご希望で、「ハル・アーキテクツ」の竹内巌氏に設計を依頼されました。

当初はコスト面から鉄骨造という方針でしたが、なるべくファサード側に柱がない空間にしたいというリクエストが出て、敷地と構造の形状が複雑になるにつれ、鉄骨も斜材が多く、接合など手間が予想されるようになってきました。施工は古くからお付き合いのある方を通して弊社をご紹介いただいていたのですが、辰の当時の社長、現森村会長が、「オリンピック需要で鉄骨の価格の値上がりが予想され、鉄骨造は外壁の選定など決してコストが低いわけではないので、形も複雑になるなら最終的にRC造の方がいいのでは」と提案しました。またその後の検討で8階建てにすることができ、より立ち姿を美しくデザインする方向で話はまとまり、RC造に変更されました。
「恵比寿も中規模のものは同じような形のビルが並んでいますが、ちょっとデザイン性のある建物が入ると小さくても刺激的ですね」と竹内氏。施工面では辰の地味な部分の頑張りも評価しています。
「コンクリートを薄くして収まりをうまくまとめたり、バルコニーのガラス廻りの防水に配慮して立ち上がりをつけて収めてくれたりと、全体として目立たない部分で力を発揮してくれました」

道路から見あげると、バルコニーの軒裏の木を貼っている部分が目を引きます。
「見あげたところもファサードの一つと捉えて、デザインしています。マンションなどでも、通常は外側にタイルを張るのが普通かもしれませんが、逆転させて、内部の小壁にタイル、外は打ち放しにということもよくやりますよ」と竹内氏。全てをセオリーだけでまとめるよりも、やはり少し余裕がある方がデザインはいいと言います。

「一般に商業施設はガラスファサードで中を大きく見せるのが普通です。私が以前渋谷で建てた5階建てのビルのように、中に仕込まれている階段、奥のエレベータまで表から見えるものもあります。しかし、今回はRC造で独特な敷地に合ったものを作ることができました。当初、四角ではない土地を購入されるとき、お施主様はまだ完成形のイメージは整っていなかったようですが、このジグザグとした形状の案に、『いいかも』と良いイメージを持ってくださいました」
「一つ隣のビルなど、表通りの新しいビルは緑化を施したりして、自然環境を意識し、街をよくしようという意思が垣間見えます。それに我々も今回、賛同しようという主旨でデザインしました」とお話くださいました。

247-2 COCOSPACE 恵比寿南

恵比寿の街並みに溶け込む多角形状ビルディング

かつて恵比寿は、ビール工場や有名な飲料水の会社がある商業地と、代官山から目黒川にかけて雑木林も散見される閑静な住宅地が混在する街であった。が、最近はクリエイティブな人たちも集まる街にさま変わりしつつある。

今回の建物は、駅周辺の中小規模のビルが並ぶ一角、小さな変形敷地にテナントビルを建てる計画である。
駅近の画一的なビルの中に埋没せずに、刺激的な存在感を示すには、その敷地形状を逆に生かした、この場所ならではのデザインが必要と考え、検討を進めたところ、道路斜線がかかって5階建てプラス、セットバックでも6階という当初の計画は、天空率を使うと8階建てになる事を導き出した。

中小規模のビルの設計は、ほとんどが避難階段と避難バルコニーのスペースの取り合いでスタートする。しかし、この建物は「く」の字型、上からみると「K」の字のようにも見える敷地特性により、建物前面を多角形の立体にすることで、より高い建物を建てることが導き出され、縦方向に伸びやかさが感じられるファサードが生まれる。
通常は正面から見た形をファサードとするが、ここでは見あげた形もそれとし、バルコニーや開口部のジグザグな配置を探った。8層分に用意されたボトルのような模型の開口部を、まるでショートケーキをカットしていくようにカッターで切り、その中で下階から上階に向けて壁のカット数を徐々に増やしていくルールが生まれ、その連続した流れが全体の統一感を維持していくことになった。ウッドの軒天が樹木を見上げたような表情を加え、多様なイメージを街にもたらす。
訪れる人には恵比寿の街の原風景を感じてもらえればと願う。

(竹内巌氏+岩城泰斗氏/ハル・アーキテクツ 談)

 

構造:RC造
規模:地下1階、地上8階
用途:飲食店舗
事業主:北辰不動産㈱
設計:竹内巌/ハル・アーキテクツ
施工担当:高沢
竣工:2020年6月
撮影:小野寺宗貴

 

247-3「建築の向こう側」竹内巌/ハル・アーキテクツ一級建築士事務所 代表

今月は、『COCOSPACE恵比寿南』の設計者、竹内巌氏にご登壇いただきます。

—リチャード・ロジャースの事務所にいらっしゃったんですね。
竹内:ちょうど時代はバブルの頃で、海外の建築家が日本に多数やってきた黎明期の頃でしたね。新宿でビルを手掛けることになって、ローカルアーキテクトが必要になり「アーキテクト・ファイブ」が参加したのです。リチャード・ロジャースを出た後、私は「アーキテクト・ファイブ」に入り、10年勤めて独立しました。

ーここは、その「アーキテクト・ファイブ」も含めて4つの事務所でシェアされているのですね。
竹内:ええ。2000年に独立したわけですが、90年代に携わった建築とランドスケープや家具デザインの仕事、そしてパートナーシップという共同創作のスタイルや印象的な旅行から、以下の6つのエレメントを「ハル・アーキテクツ」の土台、建築の軸としました。

1.物事を合理的に考える
2.事象の本質を表層に惑わされず見極める
3.建築を取り巻く自然や文化、環境との一体化を図る
4.思考・アクションは多様な人の集積で、未知のエネルギーを
生む
5.大切なものは何かを想像し続ける
6.変化し続ける事が新しさの根源

合理的に考えることは、無駄や装飾を抑制して建物の美しさを際立たせると同時に、プランニングにおいても時短、最短で与条件を満たします。「Less+」や「エストラルゴ目黒」では全体像やエントランスでその思考が発揮されています。
「鳥取県立フラワーパーク」では、ランドスケープを通して自然環境の素晴らしさ、その環境と建築は一体化できることを示すことができました。また最小限の構造はさらに、「花鳥風月+水の家」や「加賀の家」などの住宅やいくつかの別荘で発展的に昇華されて、優しさや癒しといった心的な様相と融合しています。

一方でこの間、時代はバブル崩壊、阪神淡路大震災、NYのテロ、東日本大震災など多くの深い悲しみを経験してきました。が、そこには必ず再生があり、新しい文化の萌芽も芽生えました。
そのような転換期は、苦しみの一方で新しいチャレンジを生み、今まで許容されづらかった空間を構築しました。その一例が、「エストラルゴ目黒」や「ジョイス大森」でトライしたシースルー・スペースと、大きく確保した収納という新しくも異質な面積バランスに現れています。

そしてこれらをクリエイトする私達は、関わる方たちといつも協力関係、相互補完関係にあって互いに影響し合い、新しい価値観を生み出してきました。それこそがコラボレーションであり、真のパートナーシップだと思います。予測不能なアイディアのぶつかり合いは、最近、組織事務所と一緒に共同参画したマニラやソウルの高層ホテル計画でも生かされていると思います。

建築は様々な要素のエッセンスによって形作られていますので、私達は、建築をモノ・カタチとしてだけ捉えるのではなく、むしろココチを大切にしています。
建築の本質は、そのプロセスと目に見えない時空間にこそあると感じています。空間を造ると同時に価値観を作り、いつも誰かを刺激し続け、問いかけていきたいと思います。

今回の「COCO SPACE 恵比寿南」では、そうした多様なエッセンスがうまく街に溶け込む作品に仕上がりました。
それが、「ハル・アーキテクツ」が創造しようとしている「建築の向こう側」という言葉の意味なのです。

―本日はありがとうございました。

 

竹内 巌(たけうち いわお)

1960年 東京都生まれ
1983年 法政大学工学部建築学科 卒業
1987年 都市建築設計事務所
1989年 リチャード・ロジャース・パートナーシップ・ジャパン
1990年 アーキテクト・ファイブ
1999年 城戸崎博孝建築研究所
2000年 建築設計事務所「アトリエ空」設立 代表建築家就任
2001年 現「ハル・アーキテクツ一級建築士事務所」に変更
2020年 東京地方裁判所 鑑定委員(有識者)
現在に至る(創立21期目)

247-4 ㈱ZENホールディングス 新社長に 松瀬 賢亮 氏 就任

さる9月11日、㈱ZENホールディングス臨時株主総会にて、各務善胤㈱ユニホー東京支店支店長、松瀬賢亮㈱ユニホープロジェクト推進課課長が取締役に選出され、株主の承認を受けました。
引き続き、同日開かれた㈱ZENホールディングス取締役会にて、㈱ZENホールディングス代表取締役社長に松瀬賢亮氏が選出されました。

松瀬氏は38歳。名古屋大学で建築を学び、㈱ユニホーに入社。緑営業所所長在籍時に、母校名古屋大学が、新たな留学生宿舎建設に際しPPP/PFI手法による公募を開始したことを知り、落札に向けてグループ初の取り組みとなるこの事業を推進。留学生宿舎と福利厚生施設、パブリックスペースなどの設計・施工・管理、またそのための銀行からの融資なども含めて一括して委託するという事業を見事落札し、そのリーダーシップが注目されました。PPP/PFI手法は、海外でさまざまな分野の公共サービスで成果を収めており、日本でもここ数年で活発化。基本的に一括で民間企業に委ねることで、国や地方公共団体の事業コストの削減と、民間のノウハウで、より質の高い公共サービスを提供できる事業です。

松瀬新社長はさっそくグループ各社社長との面談を開始され、9月30日、弊社社長岩本との打ち合わせに、辰にも来社いただきました。

松瀬 賢亮(まつせ けんすけ)

1982年 長野県生まれ
2005年 名古屋大学社会環境工学科建築学コース卒業
㈱ユニホー入社 開発事業部
2009年 分譲事業部
2012年 緑営業所 所長
2017年 PPP/PFI推進室 室長
2019年 プロジェクト推進課 課長
2020 年 ㈱ZENホールディングス代表取締役に就任
趣味:ゴルフと読書、youtube鑑賞
妻と子(男3、女1)の6人家族