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242-1 NY

「1511ビル」 Photo:Kazuki Watanave

写真は、昨年11月にお引渡しした法律事務所を併設した住宅です。神宮外苑の銀杏並木のすぐ近く、静かな小道に面しています。
建て主の桝實秀幸様は、このご自宅兼事務所を建築する際、30年来の友人である大塚彰宏氏と、アメリカで知り合った西本尚子氏のお二人に設計を依頼したいと考え、この度のコラボレーションが実現しました。
桝實様からの数少ないご要望に「とにかく頑丈なもの」とあったたため、大塚氏はRC造を選択、施工は江尻建築構造設計事務所の紹介で辰に依頼されました。
デザインについては、基本的にお任せ。ただし、ニューヨーク(以下 NY)に住まれたこともあり、NYという街が大好きな桝實様が、「NYを感じられるものを」というお題を出されました。そして最後に「雑誌に載るような素敵なデザインのものを」と一言付け加えられました。

さて、NYを感じられるとはどういう感じなのでしょうか?
古いビルを一棟丸ごと買ってリニューアルするのが、ニューヨーカーのスタイルと聞いたことはありますが、留学したことのある西本氏はどんなイメージを持っていたのでしょうか。
「留学で最初にヨーロッパに行きましたが、古い建物がとにかく多いという印象でした。一方で NY は特徴的なデザインを取り入れた新築の建物が年々数多く建築されているのですが、築50年を超える古い建物も多く、 古い建物はリノベーションしてかっこよく使っていて、ロフトという一つのスタイルになっています。最先端の国・都市に行きたいと思いNYを留学先に選びましたが、NYで街歩きをするうちに、新しいものと古いものが混ざりあっている街並みがとても気に入りました。桝實様の話をお伺いしていると、建築に限らず重厚感があり、落ち着いた趣の物がお好みのように感じました。」
大塚氏も、「新しいものではなく、すごく古いものでもなく、少し前の彫りが深くて味のあるいぶし銀のような建物。 それらが街並みを作っていて、それが NYらしさなんじゃないかな」と 振り返ります。
「1511ビル」もシンプルな縦長の開口部に外苑の緑の木々が映り込み、上品な雰囲気の落ち着いた色の外壁が法律事務所の信頼感、安定感を表しています。
ちなみにこれまでリノベーション物件を多く手掛けてきた大塚氏は当初、竣工写真をカメラマンに依頼したとき、新築ではなくリノベーション物件と勘違いされたといいます。
「でもそれは設計者としての狙い通りのイメージを持ってもらえたわけで、『シメた!』と思いました」と大塚氏。
新築の建物でありながら、あたかも元から建っていたかのように違和感がなく、確かに建物が自然な街並みを形作っています。
「単純なコピーではない、『東京でのNYらしさ』を実現したかった」と口を揃えられる大塚氏と西本氏。桝實様もその出来栄えにはご満足のようです。

そんなNYですが、この新型コロナウイルス感染症の世界的流行の中、都市封鎖という事態に見舞われ、人っ子一人いない風景がTVに映し出されていました。人口などの規模がNYとよく比較される東京も他人事ではありません。政府は4月7日、「緊急事態宣言」を出しました。全現場停止措置をとった会社もあり、弊社も、現場の衛生管理の徹底はもとより、建築資材の入荷など影響が出始めることは否めませんが、できるだけ皆様にご迷惑をかけることがないよう、一致団結して対応してまいります。

242-2 1511ビル

外苑の銀杏並木を臨む、NYテイストの事務所併用住宅

以前は自邸と法律事務所を別々に所有されていた建て主から、それらをまとめたいという相談をいただき、当初は中古物件を購入してのリノベーションも検討していたが、最終的に神宮外苑の銀杏並木の側の土地に運命的に出会ったことから、事務所兼自宅を新築することとなった。
機能面から外断熱のRC造を選択し、「NYかぶれ」を自称する建て主のデザインへの想いを実現させた。神宮外苑の借景を活かしながら、上品なファサードと大胆なインテリアの『ギャップ』をコンセプトに、指名さ れた 2 人の設計者で要望に応えていくこととなった。
RC造により堅牢性を担保し、外断熱にすることで内部の有効面積を少しでも増やし、温熱環境を含めた居住性を高めた(大塚)
「NYらしさ」を、「控えめで彫りの深いファサード」と解釈し、木製建具を用いて陰影のある縦長の規則的な開口部でファサードを作り、壁はテクスチャーを感じさせる塗り壁で仕上げようと考えた(大塚)

弁護士という堅実なお仕事に就く方でありながら、突然海外留学に飛び出すような自由さをお持ちの建て主に、内面と外面のギャップを感じ、そんな私達の感じる建て主の「ギャップ」をコンセプトに取り入れ、落ち着いた雰囲気の外観と、コンクリート打ち放しの空間にレッドカーペットを敷く、といった過激なインテリアを対比させたいと考えた(西本)

1、2 階は会議室、3、4 階が事務所スペース、5 階がオーナー邸。各フロア1ルームで、奥の階段でアクセスする。それぞれコンクリート打ち放しの内部に、資料の重さに耐えられる スチールの本棚を設えたりするなど、ラフな内装とした。階段の段裏も現しとなるので施工では苦労して頂いた。2階会議室には、建て主のもう一つの希望である 「友人が集うサロン」としての機能を持たせている。左側の壁面収納をオープンにするとミニバー が現れ、照明も変化を付け、昼と夜ではガラッと表情が変わる。
5 階のオーナー邸は、敷地の小ささに加えて斜線規制により切り取られる非常に小さなスペースを少しでも有効に使うため、また建て主が元来モノを持たない主義の方でもあり、必要最低限の設えとしている。仕切りをなくし、トイレ、シャワールームもガラス張りとし、洗面も階段脇にかなりアクロバティックな形で設置している。ベッドのあるロフトへのアクセスも壁に打ち込んだタラップのみとしたミニマルな空間となっている。

(大塚彰宏/アーオ建築事務所+西本尚子/NISHIKEN architect design 談)

 

構造:RC造
規模:地上5階
用途:事務所・住宅
設計・監理:大塚彰宏/アーオ建築事務所
+西本尚子/NISHIKEN architect design
構造設計:江尻建築構造設計事務所
竣工:2019年11月
施工担当:鯨津・竹原・鈴木(修次)
撮影:Kazuki Watanave

 

242-3 コラボレーションの極意 大塚彰宏/アーオ建築事務所+西本尚子/NISHIKEN architect design

西本尚子氏(左)と大塚彰宏氏(右) 「1151ビル」2階会議室で

今月は、「1511ビル」の二人の設計者にお話を伺います。10歳以上年が離れた二人は建て主の希望で初コラボレーションとなりました。

―まず大塚さんから事務所のご紹介をしたいのですが、事務所名の「アーオ」とはどういう意味ですか。
大塚:アーオ(ao)とはもちろん私、大塚彰宏のイニシャルもありますが、ハワイ語をはじめとするポリネシア語系の言葉で「光」とか「大地」「雲」などを意味します。光が作り出す空間、大地(環境)にしっかり根差した、雲のようにふわっとした、自由な建物を作りたいという気持ちで「アーオ建築事務所」と名付けました。

―桝實様とはいつ頃からのお付き合いですか。
大塚:中高時代、鹿児島の学校に通っていて、寮に住んでいたのですが、桝實さんとはその時からの付き合いで、文字通り「同じ釜の飯を食った仲」です。
大学からは別々の進路を歩むことになり、桝實さんがNYに留学する一方で、私は東京で建築を勉強し、大学院を出てからスイスのイタリア語圏の建築の大学(Accademia di Architettura)に1年間通いました。
スイス留学に限らず、学生時代からヨーロッパ、特にイタリアには幾度か通いました。古い建物が街並みを形作り、それらに新しいデザインを施しながらうまく使いこなし、受け継ぐ文化。そういう空気がとても性に合いました。私の設計の拠り所とする価値観はこの経験によるところが大きいと思います。
帰国後は、石本建築事務所でイタリア・ナポリの大学キャンパス計画や、幼稚園、保育園などの設計を担当しました。その後、ブルースタジオという、リノベーションという言葉がまだ一般的ではなかった20年程前からリノベーションと銘打って古い建物の改修と活用に取組んできた会社に移り、様々なプロジェクトを担当しました。
ブルースタジオ出身ということもあり改修専門と思われることも少なくありませんが、僕の中では新築であれ改修であれ、様々な与条件を整理して最適解を見つける作業であるという意味で変わらないと考えています。実際今回のお仕事も、当初は他物件の改修も含めて検討しました。
とはいえ、独立してから初めての新築のお仕事を、誰もが知っている青山という場所で形にできたのは、大変光栄で嬉しいことですね。

―西本さんは、どういうきっかけで桝實様と出会われたのですか?
西本:私がアメリカ留学中に、ボストン大学の同窓会にやってこられた桝實様とお話する機会があって、帰国後お会いしていく中で、設計のお話をいただけたのです。 桝實様はアメリカの大学卒業後、帰国して改めて弁護士の資格を取られ、ご自身の弁護士事務所を立ち上げたというチャレンジ精神のある方なんです。私も実は帰国後、一級建築士の資格を取り、この仕事中に自分の建築設計事務所を立ち上げることができました。

―そうだったんですか。
西本:専門学校を出てから防音工事専門の会社に入り、その後、学生の時の恩師有田佳生先生の建築設計事務所に入りました。それからイタリ アに 3 か月留学し、現地の事務所でインターンをしました。古いものが残っている海外の文化の良さを感じながら、もっと長い期間行けるとしたらどの国がいいかなと考えてNY を選びました。 そしてイタリア帰国後、NY 留学の費用を貯めるために実家の株式会社西本建設で仕事をし、フリーランスになりました。
「Connecting The Dots」というシェアオフィス・コワーキングを手掛 ける会社の社長と知り合って、そこでインテリアのお仕事をさせていただくことができました。
勉強はあまりしてこなかったのですが、仕事は早い段階からしてきましたし、ヒトと関わるのが好きだったこともあり、新しい環境に一人で飛び込んで経験したフリーランスの仕事はとても貴重だったと思います。そして念願の NY へ留学しました。

ーずいぶんパワフルに動いてこられたのですね。
西本:帰国後は「早く新築も建てられるようになりたい」と設計事務所の門をたたくことも考えたのですが、フリーランスで仕事を始めた経験もありますし、先にお仕事をやらせていただいて、その間に自分の名前を事務所として書けるようにと一級建築士の資格を取ったのです。この工事の計画が少し遅れたことも幸いしましたね。

―一級建築士の試験はそんなに簡単に通らないのではないですか?
西本:帰国したとしばらく知人には言わないで、1 年間こっそり引きこもって勉強していました(笑)試験後、ライフステージでも変化があり、結婚。 桝實様と大塚さんにも式後のパーティーに出ていただきました。今、子供が 1 歳 8 か 月になったのですが、この現場が着工したときに保育園に入れたんです。 その前は近所の方に面倒見てもらいながら、打ち合わせに出ていました。現場にも赤ちゃんを連れていったりして、皆さん理解があって温かい方ばかりでした。
大塚:本当に元気印なんですよ(笑)おかげで楽しく仕事をすることができました。

―楽しいコラボレ―ションだったようですね。どうもありがとうございました。

 

大塚彰宏(おおつか あきひろ)1976年 大阪府生まれ
東京大学工学部建築学科卒業
同大学院新領域創成科学研究科・社会文化環境講座修了
Accademia di Architettura (スイス政府給費留学)
【職歴】(㈱石本建築事務所、㈱ブルースタジオ
2014年 アーオ建築事務所設立

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https://www.facebook.com/ao.design.japan/

 

西本尚子(にしもと しょうこ)1987年 岡山県生まれ
日本工学院専門学校卒業
有田佳生建築設計事務所
㈱ 西本建設勤務
イタリアでインターンとアメリカ留学
帰国後、一級建築士取得
2018年 NISHIKEN architect design設立
https://www.nishi-ken-design.com/

242-4 「新型コロナウィルス対応にあたり(岩本社長)」「森村会長、千駄ヶ谷の現場で若手社員を指導」 

「新型コロナウィルス対応にあたり」

平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
この度の新型コロナウィルス感染拡大により、皆様、不安な日々を過ごされていることと存じます。全世界において、一日も早い終息を祈るばかりです。

弊社は4月7日の「緊急事態宣言」および「都知事からの要請」を受けて新型コロナウィルス感染拡大防止のため、作業所職員および職方、本社営業所職員の健康状態に留意し、入場入室制限等の対策を講じたうえで、事業を継続させていただいております(4月24日現在)
やむなく休業されている企業も多い中、賛否はあると存じますが、皆様にはできるだけご迷惑をお掛けしないよう細心の注意を払っておりますので、ご理解いただけると幸いです。

今月に入り、創業以来はじめてテレワークも導入しました。試験的ではありますので効果に疑義は生じますが、出勤抑制や時差出勤等いわゆる三密の回避に取り組んでおります。
お打合せについても関係者の皆様にはご不便をお掛けしておりますが、少人数またはWeb会議等で対応しております。
弊社におきましては、各作業所関係者を含め幸いにも感染者が発生しておりません。
しかしながら、建築資機材・設備機器等の供給には少なからず影響が出ております。施工会社として、情報収集および最善手配により予定通りの工事完成を目指しますが、今後の状況により工程遅延も大いに懸念されます。関係者の皆様には、ご賢察の上ご理解をいただきますようお願い申し上げます。

このような時だからこそ、弊社の強みである無借金経営は活かされます。社是「信義は万事の基」を強く意識し、全社員一丸となってこの難局を乗り切ります。

 令和2年4月24日

株式会社 辰
代表取締役  岩本 健寿

 

「森村会長、千駄ヶ谷の現場で若手社員を指導」

於:千駄ヶ谷駅前公衆便所改築工事現場 4月27日

 

3月より始まった千駄ヶ谷駅前の工事現場に、弊社森村和男会長が自ら現場員として常駐、若手の育成にご尽力いただいています。
2018年12月、現社長に席を譲り、実務からは退いていた森村会長。昨年はグループHDの役員に着任されていました。しかし昨今のコロナウィルスの状況を鑑み、来る大きな経済危機を乗り切るために、一兵卒として現場から問題を探りたいとのことです。
「斬新な構造のチャレンジングな工事となる現場。若い社員たちには建築の醍醐味を感じて意欲的に仕事に取り組む辰イズムを、ぜひ引き継いでいってほしいんだよ」とその想いを語ってくださいました。
谷尻誠氏率いる「SUPPOSE DESIGN OFFICE」の設計は7.6mの高さの2本の太い柱から伸びた梁にコンクリートの外周壁が吊られ、地上から50㎝浮いた状態になるというもの。新型コロナウィルス感染拡大に対して「緊急事態宣言」が出ており、現場には更なる緊張感を求められていますが、無事に7月のお引渡しを迎えられますよう、社員もそのお気持ちに応えて頑張ってまいりましょう。